アルミダイカスト製品設計のキモ

― ダイカスト設計は「肉の流れ」を考える ―

アルミダイカスト製品を設計するとき、最も大切なことは何でしょうか。

抜き勾配、R、肉厚、リブ、ボス、アンダーカット。もちろん、どれも重要です。しかし、これらを一つひとつ「設計ルール」として覚えるだけでは、良いダイカスト設計にはなりません。

ダイカスト製品設計のキモは、
「肉の流れを考えて形をつくること」

「必要なところを厚くする」が正解とは限らない

機械設計では、強度が必要な部分を見ると「ここは肉厚を増やそう」「ここに補強を入れよう」と考えがちです。しかし、ダイカストでは単純に肉を増やすことが、必ずしも良い設計にはつながりません。

厚い部分と薄い部分が混在すれば、アルミの冷え方に差が生まれます。肉が集中する部分では、引け巣などの鋳造不良が発生しやすくなります。

つまりダイカストでは、「どこを厚くするか」よりも「どう肉をつなげるか」という考え方が重要です。

強度は「肉厚」ではなく「形」でつくる

強度を確保するために部品全体を厚くするのではなく、必要な部分に適切なリブを配置し、荷重を受ける部分から周囲へ自然に力を逃がします。 肉を増やして強くするのではなく、肉をうまく使って強くする。経験のある設計者ほど、力の流れと肉の流れを合わせて形状を考えます。

「急」がダイカストを難しくする

ダイカスト形状を見るときに意識したい言葉があります。それは「急」です。急に厚くなる、急に薄くなる、急に曲がる、急に断面が変わる。こうした急激な形状変化は、溶けたアルミの流れや凝固の仕方を不安定にする原因になります。 Rを設けること、肉厚を均一にすること、リブの根元を工夫することも、すべて「肉を急激に変化させない」という考え方につながっています。

3DCADでは「形」ではなく「断面」を見る

3DCADで設計していると、どうしても外観形状に目が行きます。しかし、ダイカスト製品では外から見た形だけでは、本当に良い設計かどうか判断できません。 一見きれいな形状でも断面を切ると、ボスの根元やリブの交差部だけ極端に厚くなっていることがあります。3Dモデルを回して外観を見るだけでなく、何度も断面を切りながら肉のつながりを見ることが重要です。

金型を知らずにダイカスト製品は設計できない

設計者が作っているのは製品ですが、その製品を実際につくるのは金型です。どちらに型を開くのか、どこにパーティングラインが来るのか、この形状は素直に抜けるのか、スライドが必要になるのか。

製品形状だけを完成させてしまうと、後から大幅な形状変更が必要になることがあります。製品を設計しながら、頭の中では金型も考える。この感覚が非常に重要です。

良い設計者は「その先」を想像している

ダイカスト設計は、CAD上で形状が成立すれば終わりではありません。溶けたアルミはどう流れるのか、どこから固まっていくのか、金型からどう抜くのか、加工するときにどこをつかむのか。

良い設計者は、自分が描いている形だけではなく、その形が実際の製造工程でどうなるのかを想像しながら設計しています。だからこそ、ダイカスト製品設計では「知識」だけでなく、製造をイメージする力が重要になります。

アルミダイカスト製品設計のキモ

ダイカスト設計のポイントを一言で表すなら、「肉の流れと、その先の製造を考えて形をつくること」です。

肉厚、R、リブ、ボス、抜き勾配といった設計ルールは、その考え方を実現するための手段です。「この肉の付き方で本当に良いか」「この形を実際に鋳造したらどうなるか」。そこまで想像して3Dモデルをつくることが重要です。

CAD上で成立する形ではなく、
鋳物として成立する形をつくる。

そこが、アルミダイカスト製品設計のキモです。