一人前の設計者に育てるには

― CADを使えることと、設計ができることは違う ―

新入社員が入社し、図面の読み方や製図の基礎を学び、CADの操作を覚える。すると、少しずつ部品を描いたり、3Dモデルを作ったりできるようになります。

しかし、「CADを使えるようになった」ことと「設計ができるようになった」ことは同じではありません。

機械設計では、要求される機能、強度、加工性、組立性、コストなど、さまざまな条件を考えながら、自分で形状や構造を決めていく必要があります。 では、新入社員を「一人前の設計者」に育てるためには、何が必要なのでしょうか。

1.まずは「真似る」ことから始める

設計経験のない新入社員に、最初から「自由に設計してみて」と言っても、何を基準に考えればよいのか分かりません。

そこで大切になるのが、まず良い設計を見て、真似ることです。

過去の図面や既存の機械を見ることで、「なぜこの形になっているのか」「なぜこの部品を使っているのか」「なぜこの位置に取り付けているのか」を学んでいきます。

最初は先輩の設計を真似するところから始まって構いません。ただし、形だけを真似するのではなく、「なぜこうなっているのか」を考えながら真似ることが重要です。

さまざまな図面や設計に触れることで、自分の中に少しずつ設計の「引き出し」が増えていきます。その引き出しが、将来自分で設計するときの土台になります。

2.すぐに答えを教えず、自分で考えさせる

新入社員から「ここはどうすればよいですか?」「この寸法はいくつにすればよいですか?」と質問されることがあります。

もちろん必要な知識は教えますが、毎回答えだけを教えてしまうと、分からないことがあれば先輩に聞けばよい、という習慣がついてしまいます。

そこで大切なのが、「あなたはどうしたらよいと思う?」と、まず本人に考えてもらうことです。

最初から正しい答えでなくても構いません。重要なのは、自分なりに考えて答えを出してみることです。

その上で先輩が、「ここは加工できるかな」「組み立てるときに工具は入るかな」「この寸法の基準はどこにする?」と問いかけます。

答えそのものを教えるのではなく、答えにたどり着くための考え方を教える。この繰り返しによって、少しずつ自分で判断する力が身についていきます。

3.「なぜ?」を繰り返し、設計の理由を説明させる

一人前の設計者になるためには、図面や3Dモデルを作れるだけでは十分ではありません。

「なぜこの形状にしたのか」「なぜこの寸法にしたのか」「なぜこの材料を選んだのか」「なぜこの部品を使ったのか」。自分が設計したものについて、その理由を説明できることが大切です。

設計には必ず理由があります。「前の図面がこうなっていたから」「先輩に言われたから」だけでは、自分で考えた設計とは言えません。 教育する側も、「ここが違う」と指摘するだけではなく、「なぜそうしたの?」と理由を聞くことが重要です。このやり取りを繰り返すことで、新入社員自身も設計するときに自然と「なぜ?」を考えるようになります。

4.失敗と現物から学ばせる

設計者を育てる上では、すべての失敗を避けさせることが必ずしも良いとは限りません。

もちろん、実際の製品で問題につながるミスは検図などで防ぐ必要があります。しかし教育の段階では、自分で考えて設計し、先輩から指摘を受け、修正する経験も重要です。

「工具が入らない」「部品を組み付けられない」「加工が難しい」「必要な寸法が入っていない」。こうした指摘を受けたとき、ただ修正するのではなく、なぜ問題なのかを理解することが大切です。

さらに、可能な限り実際の部品や機械を見ることも重要です。自分が描いた図面がどのように加工され、どのように組み立てられるのか。実際に作業する人がどこで苦労するのか。 現物を見ることで、CADの画面だけでは分からなかったことが見えてきます。「画面の中で成立している」だけでは、良い設計とは言えません。実際のものづくりと設計を結び付ける経験が、設計者を成長させます。

5.少しずつ「任せる範囲」を広げる

一人前の設計者を育てるためには、教えるだけではなく、少しずつ仕事を任せることも必要です。

最初は簡単な図面の修正から始め、次に部品単体の設計、小さなユニット、そして複数の部品を含む構造へと、経験に応じて任せる範囲を広げていきます。

もちろん、任せたからといって、すべてを本人任せにするわけではありません。途中で考え方を確認し、必要であれば方向を修正し、最後は先輩がしっかり検図する。 「任せる」と「放任する」は違います。自分で考えられる範囲を少しずつ広げながら、必要なところでは先輩が支える。その積み重ねによって、自分で設計を進められる範囲が広がっていきます。

まとめ ― 自分で考えられる設計者を育てる

私たちが考える「一人前の設計者」とは、CADを速く操作できる人ではありません。

図面を読み、要求されていることを理解し、自分で考えて設計し、その設計にした理由を説明できる。そして、加工する人、組み立てる人、実際に使う人のことまで考えることができる。

そのためには、「見て学ぶ」「自分で考える」「理由を説明する」「失敗から学ぶ」「少しずつ任せる」という経験を繰り返すことが大切です。

設計者は、短期間で一人前になるものではありません。一つひとつの図面、一つひとつの部品、そして一つひとつの経験を積み重ねることで、自分で判断できる範囲が少しずつ広がっていきます。 答えを教えるだけではなく、自分で答えを導き出せるようにする。それが、一人前の設計者を育てるために大切な教育だと考えています。

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